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里山エッセイ



近未来の風景

そびえる高圧電線.jpg
 
 
 
「素敵なマンションが見つかったわよ。建築雑誌にも載ったことがあるんだって・・・」

関西に住む息子のためにマンションを探しに行っていた妻から連絡が入った。

住所を聞き、グーグルアースで敷地を上空から見た。(それにしても便利な時代になったものだ)

中央にプールがあって、九つの棟がそれを取り囲むように配されている。近未来的なデザインが評判の建築家の作品だ。

しかし待てよ、これは何だ。

そのプールの上に白い線が二本見える。写真合成時の線かと思ったが、その線が、南北数キロにも渡って続いている。


もしかして…、私は翌日、現地に向かった。

 
 
 
九つの棟を空中歩廊がつなぐ。手摺のパンチングメタルが重なり、不思議な模様を描いている。丸いボールトの屋根、波打つそのシルエットを追いかけ、空を見上げた。

プールの上に高圧線。一本や二本ではない。合計十二本の高圧電線が、逆アーチを描いてマンションの上に垂れ下がっている。十五万ボルトの高圧線をさけるように屋根がウェーブしている。

何という風景。前夜、暗くて見えなかったその高圧線の圧倒的な存在感に、妻は無言であった。


一九九二年、スウェーデンの国立カロリンスカ研究所が、有名な論文を発表している。

一九六〇年~八五年までの二十五年分のデータを解析した結果、「送電線から五〇メートル以内に住宅のある子供は、白血病になるリスクが二.九〇倍」であると。

欧米では、高圧送電線下の住宅はもはや非常識となっている。

十八日の徳島新聞一面トップで、WHO(世界保健機関)が、電磁波対策の法整備を求める勧告を出すことが報道されていた。

電子レンジなどの電化製品や高圧送電線が出す超低周波電磁波による人体影響(特に小児白血病)が否定できないと。

それまで「影響は見られない」と言っていたWHOが、決定的な方向転換をしたことになる。

これまで、WHOの考え方を根拠に、安全性を強調していた産業界、そして対策を取らなかった政府に猛省を促したい。


しかし、法整備がなされた時、このマンションは、どうなるのであろうか。
高圧電線の下で、スラム化し、風化していく近未来の姿が目に浮かんでくる。

コメント

実際、知り合いの中にやはり高圧送電線の下に住んでいて子どもさんが白血病で亡くなった方がいらっしゃいます。
また、学生時代に2年間ほど住んでいたところが、やはり高圧電線の下だったという方は、白血病ではなかったものの、突然頭痛がしたり、夜中に目を白黒させながら奇声を発したり(本人は記憶がないとのこと)、だが病院で診てもらっても特に異常はないというのです。
身近に起きると恐ろしさが倍増します。
でも、電磁波の問題にしろ、今私たちの生活の中には便利さと背中合わせに危険がいっぱいありますよね。
しかし、その便利さにどっぷり漬かって、そこから抜け出せない自分がここにいるのも事実です。

昔は、人が住んではいけないところが、ちゃんとあったのではないでしょうか。

だけど、技術が進歩し、住めるようにしてしまった。

そのうち、人の手による住んではいけないところが出現。

でも、やっぱり、大丈夫だよと、住めるようにしてしまった。

怖いはなしです。

 私が社会的な問題に目を向けるようになった一つの、でも大きなきっかけになったのが、この電磁波問題でした。最近亡くなられましたが、荻野欣也先生の本を読んでからでした。もうずっ-と前のことですが、一時期生協でもこの問題に注目していましたが、今は下火、ダイオキシンにしても、環境ホルモンにしても、ひとつも解決は得られていないのに、続けて警告していくことの難しさ、ですね。
 徳島でも、至るところ鉄塔の真下に家が建っています。
「ここは住んでいけない所です!」と言うのは誰なのでしょうか?
都市計画なんてややこしいこと以前に、私たちの生きる権利、安心に暮らす権利が余りにも無視されていることに憤りを覚えます。

 そういえば、娘の住む久留米も鉄塔の目立つ町です。彼女がはじめ住んだアパ-トも、知っていながらやむなく・・・後でつくづくと後悔したのですが、その後の彼女のいくつかの経歴をたどると、親として何と不注意だったのか!と悔やんでいます。

確かに、電磁波は要々注意だと、このコラムを読んで改めて実感しています。

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